離婚の基礎知識 | |||
1:離婚とは | 2:夫婦関係修復 | 3:男性の離婚 | 4:女性の離婚 |
5:離婚の種類 | 6:協議離婚 | 7:調停離婚 | 8:裁判離婚 |
9:法定離婚事由 | 10:浮気・不倫 | 11:悪意の遺棄 | 12:その他の事由 |
13:婚姻費用 | 14:離婚の慰謝料 | 15:財産分与 | 16:子供の養育費 |
17:子供の親権 | 18:面会交流権 | 19:年金分割 | 20:離婚協議書 |
親権とは、父母が未成年の子供に対して有している、身分上・財産上の保護・監督・教育・管理などの一切を内容とする、包括的な権利及び義務の総称です。 婚姻期間中は、両親の共同親権となっていますが、離婚する場合には、いずれか一方を親権者と定めなければなりません。 親権の有無は、養育費の支払義務や面会交流権(面接交渉権)とは、原則として関係がありません。 |
未成年の子供がいる夫婦が離婚届を提出する場合、親権者が定められていなければ、離婚届は受理されません。(民法第819条)
離婚前の親権は、共同親権として、両親が共同して行使しますが、離婚後の親権は、いずれか一方としか定めることが出来ません。
また、子供が複数いる場合には、それぞれの子供について親権を定める必要があります。
親権には、「何歳までは母、何歳以降は父」などというような条件を付することは許されません。
親権の内容は、大きく2つに分かれています。
・親権者 → 財産管理者(財産管理権を行使する者)
・監護者 → 身上管理者(身上管理権を行使する者)
通常は親権者となった一方の親が「身上監護権」と「財産管理権」を行使しますが、場合によっては、これを別々に分けることも出来ます。
身上監護権(監護権) | 財産管理権 |
---|---|
子供の教育や懲戒・職業の許可、など、身の回りの世話をする権利のことです。 | 子供の財産を管理したり、法定代理人として契約などの法律行為を行う権利のことです。 |
・教育権 | ・契約の同意権 |
・懲戒権 | ・契約の取消権 |
・職業許可権 | ・法定代理権 |
・居住指定権 | ・子供の財産の管理権 (保存・利用・改良) |
なお、親権の争いで協議が付かない場合などに、「親権」を「財産管理権」と「身上監護権」とに分け、前者を「親権」、後者を「監護権」、とする場合があります。
この場合、離婚届に記載する親権者とは、監護者(財産管理者)の方を記載します。
また、あとでトラブルとならないよう、離婚協議書にきちんと明記しておくことが賢明です。
離婚届を提出する際には、親権者を指定しなければなりませんから、親権者が決まらなければ離婚をすることが出来ません。
当事者間の協議で親権者が定まらない場合には、家庭裁判所へ離婚調停(夫婦関係調整調停)の申立を行い、調停または審判によって親権者を決定することになります。
この場合、家庭裁判所が判断する最大の基準は「子供の福祉」です。
どちらが子供の生活や成長にとってより良いものであるかということです。
決して経済力だけの問題ではありません。
一般には、母親と一緒に暮らすことの方が子供の福祉にかなうと判断されます。
家庭裁判所が親権者を決める際の判断材料としては、以下のようなものがあります。
@ | 監護能力・心身の健全性 |
重大な病気を患っていたりしていないか? | |
精神上の疾患はないか? | |
A | 経済的基盤 |
子供の養育に対する経済的支障はないか? | |
浪費や多額な借金など、経済的破綻のおそれはないか? | |
B | 生活環境 |
居住環境や家庭環境、教育環境などに問題はないか? | |
現時点で暮らしている環境になじんでいるか? | |
環境を変えても順応出来るか? | |
C | 子供への愛情・子育ての意欲 |
子供を育てる意思・意欲はあるか? | |
子供に対する愛情はあるか? | |
D | 子供の年齢 |
子供が10歳までは、原則として母親が面倒を見る方が良い | |
10歳から15歳くらいまでは、心身の成長・発育に応じ、子供の意思も尊重する | |
15歳以上の子供には、本人の意見を聞き、判断材料とする |
親権者を定めた後、一度決めた親権者を変更したい場合は、家庭裁判所へ申立を行い、許可をもらわなくてはなりません。
そして、許可が出されるためには、子供にとって変更すべき理由が必要です。
両親の間で合意があったとしても、家庭裁判所の審判を受けなくてはなりません。
そして、審判によって決定が出されるにも、子供にとって変更すべき理由が必要です。
親権者が変わり、生活環境が変わること自体、子供の福祉上あまり良いことではないからです。
面会交流権(面接交渉権)とは、監護・教育しない側の親が、その子と親子の面会交流する権利のことをいいます。
定期的に直接会って接触することや、誕生日やクリスマス、入学、運動会をはじめ、その他、宿泊・旅行その他のイベントなどは、子の健全な養育のためにも必要なものです。
ただし、必ず認められるものではありません。
面会によって子供が精神的に動揺して情緒不安定になったりするおそれがある場合には、認められません。
欧米では、週2回〜3回などの面会交流が当然になっているそうです。
しかし、日本では、そんなに簡単ではありません。
養育する側が抵抗すると、争っても面会交流の機会は月1回を定めるのが限界です。
また、面会拒絶された場合、これに対して直接強制する手段はありません。
実務上、民事執行法に基づく間接強制という方法があり、例えば、調停などで定めたにもかかわらず、養育する側が正当な理由なく面会交流を拒絶した場合、拒絶1回につき罰金20万円、などという執行をすることが出来ます。
ただし、一方の養育する側拒否する場合に、これを強制することは、養育者を精神的・経済的に追い込むことにもなり、養育者を精神的・経済的に追い込むことは、そのまま子供の養育環境へも悪い影響を与える恐れがあります。
よって、お子さんがいらっしゃる場合、仮に親権が取れないからといって、あまり相手と最悪な関係にはならない方が、ひいては、自分と自分の子供のためではないかと思います。
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